Asahi's notebook

大麦小豆二升五銭

シャベル術?

先週はガレキ運搬作業に精を出していました。最初の二日はシャベルを使う時間が多く、二日で5時間(以上?)くらいはやっていたかと思います。二日目の朝起きると左の前腕がちょっと張っていて、ものを掴む動きで負担がかかっていたのが分かったので、それも手掛かりに工夫をしてみました。

あれこれ試す中で、まず手掛かりにしたのは名古屋の山口先生から教わった舟状骨の振動。舟状骨とは手首関節で親指・人差指・中指を繋いでいる骨です。ここを揺らすと力が指先から前方向に行くので、筋肉が膠着するのを防げます。「バイバ~イ!」と手を振る動きです。そしてもう一つは、私の中で外しがたい基本にまでなりつつある、左右観による體の観方。こちらは兵法武学研究会で光岡先生から教わっているものです。特にここのところ注目しているのは、右の定位(ピタッと留まる)する感覚と左の止まりきらずに開放感が残る感覚の違い。両手で棒などを持っている場合、右に集注していくとピタリと留まるのですが、左を観ていくと少しぶれというか揺れというか、定まりきらない感じが残るのです(これは人体の左右での運動傾向の違いなので、利き手とはあまり関係ないようです)。
さて、シャベルでガレキを手押し車に入れるのですが、すくう方の動きには特に問題ありません。筋肉痛の原因になるのは重いガレキを持ち上げて荷車に放る方の動きで、ここで腕を曲げて引き寄せる際に、左の前腕が無理をして重さを受け止めてしまっていることがわかりました。シャベルを前に押し出してすくい、止まって、(力を込めて)引き寄せる。自分がやっている動きをそう捉えると、これは武術なら最もありがちな失敗例ではないかな、という気がしてきます。舟状骨の感覚が分かったことで、指先から前に出していく動きはスムーズです。このせっかくの流れをわざわざ止めて、逆方向に力を入れて引くというのは非常に無駄なことをしている予感。

そこでふと思いついたのは、ずっと前に押し続ければいいのではないか?ということでした。以前に空手の稽古で、左右の半身を入れ替えながら前に進むときは、左右どちらが前であるかに関わらず「右半身を前に出す」ことでスムーズに進めるということに気が付いていたのも、関係しているかもしれません。ともかく左手の軽い動き出しでシャベルを押し出したら、次は右手のピタッと留まる傾向に集注を切り替えて、さらに押していきます。その力の流れを邪魔しないように左手で方向だけを変えて手押し車に放り込むと、ほら重くない!
もちろん結果的には腕は曲がっていますし、見た目はやっぱり引き寄せる動きに見えると思いますが……。
この感覚に気が付いてしばらく機嫌よくシャベルを振るっていると、ふと(自分は参加できなかった)システマの槍術ワークショップのことを思い出しました。コサックの槍の使い方は農作業でシャベルを使う動きと同じだというミカエルのコメント(ツイッターのbotで読んだのだと思います)。それと動画で見た、まるで手の中の槍が生き物のように勝手に動いていて、それに追随しているだけかのようなミカエルの腕の動きです。
考えてみれば、ほんの二日間で56時間の作業とはいっても、これが武術の稽古なら「○○術ワークショップ」と題して宣伝ができるくらいの練習量ではあります。逆に言うと、ひとつの道具に付きっきりでそれだけのまとまった時間、工夫し続ける機会は意外とありませんでした。それに誰に何を教わることもなく、というのも大事なことかもしれません。

とりあえず、作業はもう一週間あるのでどんな発見があるか楽しみです。