Asahi's notebook

大麦小豆二升五銭

夏の足音

 22℃、なのだそうだ。私の携帯に表示された、明日の予想気温である。

 スコットランドで20度を超えるとなれば、これはもう夏である。数日前からなかなか日差しもあり、暖かい日も増えてきた。日本のように一度暑くなったらそのまま、というわけではなく、比較的アップダウンは激しい。今の時期なら冬のように冷える日が間に挟まってもおかしくはないのだが、それにしても全体の気候は俄然夏めいてきた。

 

 CCIVD-19の流行を重く見てのロックダウンが始まったのが確か3月末だったから、もう2ヶ月経つことになる。あまり情報を確認していないが、明日木曜からは外出制限の緩和が始まるらしい。様子を見ながらひとまずは第一段階ということのようだ。屋外で他世帯の家族や友人と、短時間の集まりが解禁になるらしい。家を訪ねるのは次の段階に移行してからだそうだ。出勤や店舗の営業等についても段階的に再開していくそうだが、イングランドの中央政府と比べると、総じてスコットランド政府は慎重な姿勢のようだ。

 今は個人的に忙しい時期であるせいで、私はあまり最新の情報を追ってもいないし、世間一般の関心ほどには興味もない。またネットで見ている限りだが、日本での関心の高まり方とスコットランドのそれでは随分違いがあるようにも思える。少なくとも街を歩いている限りでは、生活が質素になって少し寂しさを覚えるくらいだ。これだけ店を閉めて、こんな日常もあり得るのかという意外さが、今でも尾を引いている。

 人々は萎縮しているわけでもなく(中にはそういう人もいるのだろうが)、普通に出歩くことはしている。健康のためにジョギングやサイクリングをする人は充分に多い。ただ、外出する理由は買い物と散歩のほかは、一部の仕事や通院等、ごくごく限られたものだろう。おそらくそのせいで、街中に人はいるのに、その姿が不思議な落ち着きと静けさを帯びている。イギリスでも有数の観光都市に似つかわしくない程に、すべてが質素なのだ。そして、夏の足音が近付いてくるにつれて、そのミスマッチがいよいよ浮き彫りになってきそうな気配がしている。

 一月後、どのような風景が広がっているのだろうか。夜の夕日を浴びるテラス席でビールが飲みたい。