Asahi's notebook

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らせん階段の登りかた

 ヨーロッパの古い教会や城などを訪ねると、らせん階段にでくわすことが結構あります。特に大きな城や大聖堂と呼ばれるタイプの建造物だと、高い塔が備え付けられていてTower tourなどと銘打って、時間を区切って登らせてくれるところも多いです。
 高い塔の上から街を一望するのは最高なのですが、こういった歴史的建造物のらせん階段といえば、登りにくい!キツイ!何段あるのこれ!?というものが大方ではないでしょうか。横幅は狭く(体の大きい人だとつっかえそう)、段は高く、段の奥行きも狭くて足の大きい人だと踵がはみ出すような造りのところがかなり多いように思います。

 らせん階段を登りにくくしている要因のひとつは、まっすぐに伸びていない!ということですよね。さらに幅が狭いとカーブの角度も急になり、愚直にらせんに合わせて登ろうとすると、ずいぶん余分な体力を使ってしまいます。

 このような階段を登るときのコツは、実は「らせんを無視する」ということです。具体的には、階段の一番幅が広いところに足を乗せながら、らせんの内側に向かわずにそのまま外側の壁に向かって「直進するつもりで」、まっすぐ登っていくのです。
 壁にぶつかるんじゃないかって?そんなことはありません。なぜなら階段のカーブのせいで、一段登るごとに少しずつ、あなたの体は内側に向かって勝手に軌道修正されてしまうからです。まっすぐ進んでいるつもりでも実際には微妙に角度がついて、結果的には自然とらせんに沿って登ることになります。

 この仕組みなど、人間にとっての「まっすぐ」とは何か?と考えてみると、意外と単純ではないのですね。人体の構造から発生する運動の上でのまっすぐと、感覚的なまっすぐ、建築などによる幾何学的直線としてのまっすぐ、これらがすべて微妙に重なりつつ、どれ一つとして完全に同じではないのです。