Asahi's notebook

大麦小豆二升五銭

新鮮野菜とソーセージ!

水曜。マーケットの日。いつもより少し早く起きて、Jの運転する車で町へ向かう。このときにお世話になっていたのは、スコットランド北部にあるハイランド地方の主都にあたる、Invernessからほど近い個人農場。前日にたくさん収穫した野菜やイチゴ、育てている鶏と豚からは卵とソーセージやベーコン、ハムなどを車に満載して売りに行く。この日の目玉商品は、日曜に焼き上がったばかりの自家製のポークパイだ。

イギリスのマーケットでは広場に朝からたくさんの屋台が並び、食べ物、雑貨、カフェ、アクセサリなどの様々な品物を扱っているのが見られる。私も旅行で訪れたときにはブラブラして軽く買い食いなどするのが大好きだが、売る側になるのは初めて。テントを組み立て、折り畳み式のテーブルを置き、品物を並べて、値段が書かれた黒板をつるす。
 少し遅れて着いたこともあり、すぐにお客さんがやってきて、雑談を交わしながら野菜や肉類を買って行く。さっぱり勝手の分からない私は、一人でてきぱきと対応をこなしていくJに袋や釣銭を手渡しながら、値段と流れの把握を試みる。

 多少様子が分かってきたころ、Jが車を移動させると言って離れていった。お客はまばらだが、ときどき立ち止まって商品を手に取る人がいる。とりあえずその人たちに声を掛けつつ、購入する人の対応をした。いくつかの商品は表の中に値段がない。はて、卵は2ポンドだったか、3ポンドだったか。とりあえず2ポンドを受け取っておく。間違っていれば自分が1ポンド返してもいいし、別にそのくらいのことで文句を言われることもないだろう(だって、値段についての説明を何も受けていないし)。
 戻ってきたJに価格不明だったいくつかの商品について尋ねた。卵は2ポンドで正解だったらしい。ひと安心。少し慣れてきた後半は、Jが店番を私に任せて他の屋台の知り合いと喋りに行く場面もあった。

 この日、雨のせいで客足はそれほどではなかったが、印象的だったのはリピーターが結構いたこと。「この間のあれが美味しかったんだけど、今日はないの?」とか「ポークパイができたって聞いたよ!」と言ってやってくる人とか。
 美味しいものを、地域のひとびとに届けてきたのだろう。日本でも道の駅などで生産者の顔が見える関係が人気になってきているが、イギリスでも同じような流れはあるようだ。こういった広場でのマーケットは一時期下火になっていたが、近年また盛り返してきているという話を聞いた。

 この日はとても楽しい体験ができた。機会があればまたやってみたいものだ。