Asahi's notebook

大麦小豆二升五銭

黄色い悪魔

プディングと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
日本で目にする範囲だと、たいていの人はカスタード・プリンを思い出すでしょうか。
イギリスにはプディングと名のつくものが色々あります。今の時期だとまさにクリスマス・プディングですが、これは日本語でどうにも説明のしづらい変わったデザートで、ドライフルーツやナッツなどにスパイスを加えて、小麦粉とラードのような油で練って型に入れたものを蒸して固めたもの、だったはずです。
日本でも輸入食品店などで手に入るので、食べてみて口に合わなかったという人もいるかもしれません(私は好きですが)。
ちなみに温めてからラム酒のソースやバニラアイス、カスタードなどを添えて食べるのが一般的です。決して冷たいまま食べるようなモノではありません。

このプディングの定義を検索してみると、上記のような小麦粉や油で練って加熱した料理というものがひとつ。そして日常的にもっとよく使うのはデザート全般、とくに温かいデザートを指す場合です。

 イギリスやアイルランドの店で食事をすると、ごく定番の「温かいデザート」が何種類かあります。その中でも特に私の心を掴んで離さないのがスティッキー・トフィー・プディングSticky toffee puddingとトリークル・スポンジTreacle sponge(写真)で、これらにはアイスクリームやカスタードソースを添えて食べます。

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 ちなみに前者はデーツ入りのどっしりしたケーキにキャラメル系の「トフィー」ソースがかかったもの、後者はカラメルソースに近いもので味付けしたスポンジケーキです。
 これらの温かいプディング、かなり強烈に甘いのですが、そこで口当たりを柔らかくしてくれるのが冷たいアイスやとろりとした温かいカスタードソース(!)なのです。

 さて、カスタードと聞けば冷たくて甘い、生クリーム並みに重たいクリームを想像するかもしれません。こちらで温かいデザートに添えられるのは、とろりとしたスープのような状態のものです。
 これをスプーンですくって熱々のプディングと絡め、火傷しないように息を吹きかけながら食べる。ああこれぞ文明化社会の到達点!
 人類を堕落させるカスタードとデザートの組み合わせは、これだけではありません。

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 この写真が何かわかりますか?
 これはアップルクランブルApple crumbles、小さく切ったリンゴの上に小麦粉とバターで練ったほろほろのクッキー生地をかぶせ、オーブンで焼き上げたお菓子です。リンゴだけではなく、ラズベリーやクランベリーなどを使ったものもあります。
 この写真はスコットランドのハイランド地方、有名なDean’sというショートブレッドの工場併設のレストランで出されているものです。
ショートブレッドの工場ですから、生地は濃厚なバターの香りとわずかな塩味、控えめな甘さでサクサクです。もちろん温かい。そこにリンゴの酸味とカスタードのとろりとした口当たりが加わります。

この悪魔のようなカスタードソースは実は家庭でも簡単に作れます。スーパーで粉末カスタードというものが売られていて、熱湯を加えるだけですぐに使えるようになっているのです
人々を堕落させる恐ろしい国……!
英国を訪れた際は、ぜひお試しを。