Asahi's notebook

大麦小豆二升五銭

住まい探し顛末

 先日、エディンバラで早くも引越しを経験した。この街に腰を落ち着けてみようと決めてほんの3ヶ月と少しである。理由は簡単なことで、大家のわがままと言うほかはない。まあそれなりに起こりうることではあるらしく、「ハズレ」を引くとこういう目に遭うこともあるということだ。
 一ヶ所目の住居は驚くほどあっさりと決まった。こちらでの家探しの定番はネット上の専門サイトで候補を探し、大家なり住人なりと連絡を取って訪問・見学をさせてもらい、最終的には複数の希望者の中から先方が選んだ相手にオファーを送るという形式になる。空き部屋に対して入居希望者の数が多い状態ではとりあえず手当たり次第にメールを送るのが常套手段になるが、このときは違った。まだ勝手がわかっていない私は、様子見のつもりで数件のメールを出し、返事をくれたここの住人に会いに行った。部屋を見学し、話をして、次の朝にはこの部屋に住むことが決まった。候補として訪れたのもこの一軒だけ。家を探してほんの1週間ほどの出来事だった。
 
 夏の間はこのアパートで快適に過ごすことができた。ただ先述した大家の信じ難いわがままにより、8月末日で退去することとなった。あまり面倒な事情を長々と書き連ねるのも腹立たしいので割愛するが、経緯としては修理すべき設備を2ヶ月間放置した挙句、ついでに古くなったフラット(アパートの部屋)をリフォームするから出て行ってくれ、ということを藪から棒に言い出し、さらに金銭絡みでどう考えても私たちが負担する理由のない費用を払ってくれとまで要求してきたのである。
 このフラットに10年近く住んでいた同居人のMが大家との連絡・交渉などはしてくれたのだが、彼女は大家の急な心変わりに驚くとともにたいへん腹を立て、市の相談窓口のようなところに通うなどして、私たち3人を代表して闘ってくれた。全員が入居時に預けている保証金(deposit.日本で言う敷金?)を修理費としてネコババしようとしていた大家に法的な手段をちらつかせて断念させたのも彼女である。そういう事情もあって私自身は細かな成り行きをすべて把握はしていないのだが、ともかく私たちは当初の予定より早い8月末に退去することにはなったものの、金銭的な被害は受けずに住んだ。
 
 さて困ったのは私である。ひとまず彼氏の家に転がり込むことのできたフラットメイト二名と違い、私には頼る彼氏はもちろんのこと彼女もいなければそもそもこの土地に知り合いそのものがほとんど皆無だ。正攻法で新しい住居を探すしかない。
 結論から言えば二度目の家探しにはそこそこ苦労し、無事に入居できたのは先週のことである。出したメールの数は覚えていないが、実際に訪問した家は10軒はあったろうか。またこちらの事情でオファーを辞退したケースもあった。
 9月の間は市内のホステルを転々としていたわけだが、同じような事情の人の中には、いっそ割り切ってホステルに腰を落ち着けてしまう人もいないではない。寝室が個室でないことにさえ目をつぶれば、そう悪い暮らしでもないことは想像がつく。宿泊費用としては、一番安い価格帯の部屋の家賃と同程度といったところだろう。個人的には一人で落ち着ける部屋がないのはいささか辛いのと、荷物の量がやや多いため、住む場所がみつかったのは幸いだった。